-
中に白を置いてみる。「白は混沌の中から立ち上た
る最も鮮烈なイメージの特異点である。 混じり合うという負の原理を進行し、
に回帰しようとする退行の引力を突破して表出する。白は特異性の極まりとして発生す
るのだ。それはなんの混合でもなく、色ですらない。
エントロピーという概念がある。熱力学の第二法則の中で語られているこの概念は、
混沌の度合いを示している。 熱力学の第二法則とは、あらゆるエネルギーは平均化され
ていく方向で保存されるという物理法則である。手の中のコーヒーカップのコーヒーは
今、熱く湯気をたてているが、やがてそれは冷めて周辺の温度と同じになってしまう。
・コーヒーは手に持っているままでは決して熱くなったり、凍ったりはしない。それは確
実に冷めていく。しかしコーヒーの熱は失われたわけではなく、周辺の温度と平均化さ
れることで保存されていくのである。東京の気温、シベリアの気温、コンゴ盆地の気温
は、生命のような地球の活動のおかげでそれぞれ異なるが、巨大なスケールの時間の中
では、やがて同じ温度になっていく。 地球の温度も、いつかは周辺宇宙と入り交じって
宇宙の平均温度に無限に接近していく。エントロピーの増加とは、特異性を減じて平均
の果てへと帰趨することを意味している。 全ての色が混じり合ってグレーになるように、
エントロピーが増大する果てには巨大なエネルギーの混沌世界がある。 コーヒーカップ~
の熱も、東京の気温も、地球の温度も、全ての熱エネルギーは一つの巨大な平均として
保存されていく。ただ、この混沌は、死でも無でもない。何ものでもなくなったエネル
ギーは、同時に何ものにでもなりうる保存された可能性そのものであり、その大いなる
無限の混沌から、エントロピーを減じながら突出してくるものこそ「生」であり「情報」
ではないか、エントロピーの引力圏をふりきって飛翔することが生命である。 混沌の無
してくるものが意味であり情報である。 その視点において生命は情報と同
日は、海の中から発生する生命あるいは情報の原像である。白はあらゆる混沌から
のがれきろうとするエントロピーの極みである。 生命は色として輝くが、白
ものがれて混沌の対極に達しようとする志向そのものである。生命は白を
が、具象的な生命は地に足のついた瞬間から色を帯びている。
01
から再びまっさらな色が生まれてくるのである。
G
意味
シベ
部の
盆地
がる
原
具回イ混
恋