-
カンタータ 『土の歌』
第3楽章:死の吸。
第5楽章:天地の怒り
世界は絶えて滅ぶかと
生きとし生けるもの皆の
悲しみの極まるところ
死の灰の怖れはつづく
第6楽章:地上の祈り
美しい 山河を見て
美しい 花を見て
大地の意を信じよう
雷だ
いなづまだ
嵐だ 雨だ
詩 大木停夫
洪水だ
思龍を
文明の不安よ
自然に事けて感謝しよう
土の歌
大木悼夫
科学の恥辱よ
人智の愚かさよ
土手が崩れる
崖が砕ける
橋が流れる
ああ
戦争の
狂気をば
鎮めたまえ
剣の乱れ
爆弾の恐れを
樹も垣も
第1楽章:農夫と土
ヒロシマの また長崎の
地の下に泣く
いけにえの霊を偲べば
日月は雲におおわれ
根こそぎにされる
耕して 種子を撒く土
人みなのいのちの糧を
創り出す土
耕して種子を撮く者
農夫らの楽しみの種子
悲しみの種子
ともかくも種子がいのちだ
朝星をみて 野良に出る
濁流が
家を呑む
人をさらう
さけたまえ
天意にそむくな
心は冥府の路をさまよう
地の上に山脈があり
地の上に重みがある
地の下に燃える火があり
地の下に怒りがある
地の上に絶えずかぶさる人間悪よ
地の上のなげきは深い 長い年月
動乱を
おさめたまえ
ああ 戦争の
狂気をば
鎮めたまえ
第4楽章:もぐらもち
働いて 額に汗して
もぐら もぐら
夕星を見て帰るのだ
種子をはぐくむ土こそは
種子をまく者の夢だ 望みだ
そして祈りだ
土にもぐって
地の上に花さく限り
よろこんで日こと営み
悲しみも耐えて生きよう
日のめもみない
もぐら もぐら
火の山の
それでもおまえは
爆発だ
地震だ
火事だ
しあわせだと
ああ 栄光よ
花さき みのる 毎年の
もぐら もぐら
ああ 地の上に平和あれ
約束の不思議さよ
地の下の
穴の暮らしが
やすらかだとさ
第7楽章:大地讃領
母なる大地のふところに
われら人の子の喜びはある
燈岩が流れる
第2楽章:祖国の土
尾根が崩れる
もぐら もぐら
落ちる
大地を受せよ
大地に生きる人の子ら
その立つ土に感謝せよ
ああ 大地
なだれる
踏んでみて
寝ころんでみて
たしかな大地
ああ まして祖国の
火の槍におびえる者は
死の灰をおそれる者は
65らの真似をするそうな
火の海だ
修羅の巷だ
逃げまどう人の
すさまじい叫び
平和な大地を
静かな大地を
土の尊さ
なるほどな
大地をほめよ たたえよ土
思龍のゆたかな大地
われら人の子の
大地をほめよ
たたえよ 土を
うめき
大空の星を仰いで
高く仰いで 歩け 歩け
しかし 溝には はまるまい
土から出て来て
のけぞる
土にと帰る
ころがる
もぐら もぐら
煙突が倒れる
時計台が崩れる
荒れ狂う町
どのみち
山河よ
それが人間か
さくらの 菊の
わっはっは
わっはっは
花さく丘よ
顔あげて
堂々と 踏みしめて
この土を 踏みしめて
この土を 護ろうよ
もぐら もぐら
笑ってやれよ
人間を