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[前提] クマゼミの一生と、環境の影響を受ける時期
気温や湿度がクマゼミに与える影響を考えるため
に、 まずは、その一生を確認しておこう (図2)。
①卵の段階クマゼミは、夏に枯れ枝に産卵する。
卵はやがて休眠に 入 り、そのまま地上で冬を越す。
②孵化して土に潜 る 休眠を終えた卵は、春、
段階
気温が上がると体を作り始め、梅雨から夏にかけ
て孵化する。雨の日に孵化し、幼虫はすぐ土に潜る。
③ 幼虫として地中で過ごす段階 植物の根から栄養
を取り、七年ほどかけて成長する。
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④地上に出て成虫になる段階 幼虫は夏に地上に出
て羽化し、産卵して一生を終える。[
この中で、気温や湿度の影響を受けやすいのは、
地上で外気にさらされる ①②④の段階であると推定
できる。特に、小さく未熟な状態である①と②は危 B
険だ。 ①の卵は野外で冬を越すため、厳しい寒さに
耐える必要がある。また、②の孵化したばかりの幼
虫は弱く、一時間以内に地中に潜らないと、アリに
襲われたり乾燥したりして死んでしまう。そのとき
の環境に、生存が左右されるおそれがあるのだ。
[仮説1] 冬の寒さの緩和
私たちはまず、地上で冬を越す 「①卵の段階」に注目し、
[仮説1] クマゼミの卵は寒さに弱く、昔の大阪
では冬を越せるものが少なかった。しかし、気
温上昇で寒さが和らぎ、越冬できる卵が増えた。
この仮説を検証するために、私たちは