14. 表現[Ⅱ]
次のA・B・Cから一つ選び、後の原稿用紙を用いて書きなさい。
次の文章を読んで、あなたも自身の周りを見渡して「妖怪」を「探してみよう。 そして、その妖怪の名前の由来と、それが私たちのどのような感情に関
わっているのかなどを、四百字以内で書きなさい。
部屋を散らかす「トッチラカッパ」。トイレの紙を使い尽くす「べんじょみいら」。ポケットに砂を入れて洗濯させる 「すなかくし」―。 東京都内で子育て中
の絵本作家いちよんごさん(38)の「妖怪かるた」をめくると、肩から力がフッと抜ける。
「子育てってイライラの連続。 でも妖怪のしわざだと思うと、むやみに子どもを叱らずに済みます」。創作のきっかけは8年前、夜更かしする長男を寝かそう
と作った絵本。人の生気を鼻から吸いとる伝説の妖怪「黒玉」を登場させ、「9時過ぎた。黒玉、黒玉。寝ない子どこだ」。
子どもの頃から妖怪好き。 水木しげるの作品を読み、 妖怪研究の先駆者である井上円了の著作にも親しんだ。 民話に残る妖怪に自作のお化けを加え、シリー
ズかるたを制作してきた。
夫(4)の日常にも妖怪はひそむ。「うん」「へぇ」と生返事ばかりの「うんへぇさん」。捨ててほしくて玄関に置いたごみ袋をまたいで出勤する「ゴミまたぎ」。
どちらも、わが身に覚えがある。
「子育てをひとりで背負わざるをえない窮屈さを何とかしたい。その気持ちが出発点でした」。作品は市販に至っていないが、各地の小学校や児童館で開くか
るた大会やかるた作り講座は100回を超えた。
思えばこの世は矛盾と不合理の吹きだまりである。人の弱さやずるさ、 感情のもつれを妖怪のせいにしてのみこむのは古来の知恵でもあろう。新作は受験が
テーマ。妖怪探しの旅はさらに職場や子離れ、老後へと続いていく。
※表記は原文のまま
(朝日新聞「天声人語」 二〇一七年七月三十一日付)